研究概要 |
本研究の目的は,タミル現存最古(紀元前後〜後5世紀)にして古来絶大な権威をもってきた詩論を含む広義の文法書『トルハーッピヤム』(以下Tol.)の第3部「詩論」(他は第1部「音韻論」,第2部「形態論」)の訳注研究の一環として,刊本や写本を収集し,それら諸版の間の異読をもとに基本テキストを準備することであった。その結果は以下のとおりである。 1)Tol.「詩論」部分の電子テキストの単語に区切った形式のテキストを作成し,入力ミスも可能な限り修正した。 2)刊本間の異読に関してはほぼ入力済。しかし,写本の入手がおくれたために,この写本での読みは電子テキストに反映してない。 基本テキスト準備以外に,Tol.の詩論研究に関連して,(1)詩学における術語(専門用語)のデータ整理・パソコン入力を行ったが,完成に至ってない。(2)また平成17年の授業ではTol.の「感情表現(rasa論)」の部分をサンスクリット詩学と比較しつつ講読した。学会・研究集会等では,(3)平成16年7月と平成17年7月にドイツ・ハイデルベルグ大学で開催された2回の国際タミル詩論研究集会に参加し,第1回はTol.よりやや成立の遅い詩論Iraiyanar Akapporulの訳注研究,第2回はTol.詩論部分第1章の訳注研究を行った。また,(4)平成16年8月にはモスクワで開かれた国際東洋者会議ICANAS-37に参加し,古典解釈に大きな影響を与えてきた詞書の成立に関する問題について発表を行った。その他にも,(5)文学の発生の問題との関連で,万葉古代学研究所(奈良県橿原市)の共同研究員として,年に数回の共同研究に従事した。
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