研究概要 |
本年度はブリハットカター(Brhatkatha, BK)諸伝本の内、特にネパール系といわれるBrhatkathaslokasamgraha(BKSS)およびジャイナ系であるVasudevahindi(VH)の中で、ことに重要な主人公と妃との出会いと結婚、妃の出産と失踪を語る部分を精読し、その結果、両伝本の特徴を把握することができた。 BKSSはその題名の示すとおり原BKの要約であり、VHにおいては本来のナラヴァーハナダッタ物語が、ヴァスデーヴァ物語に改作されているため、BKSSとVHによって原BKの物語内容を復原することは、従来考えられているほど容易ではないことが確認された。特に、BKSSの作者が物語を要約するとき必ずしも細部に十分な注意を払わず、大幅な節略を行っていること、そのためBKSSに主人公の年齢などについてさまざまな微妙な矛盾が生じてしまっていることが明らかとなった。なほBKSS現行テキストには訂正すべき箇所が少なくないことも確認された。
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