研究課題/領域番号 |
15520215
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
新井 政美 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (60167989)
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研究分担者 |
林 佳世子 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (30208615)
菅原 睦 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50272612)
チェリ バフリエ 東京外国語大学, 外国語学部, 客員助教授
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キーワード | トルコ文学 / ヒルミ・ヤヴズ / オヤ・バイダル / ラティフェ・テキン |
研究概要 |
本年度は二つの課題を掲げて研究を進めた。 第一点は、昨年度取り上げた作家たち(ヒルミ・ヤヴズ、オヤ・バイダル、ラティフェ・テキン)にとって決定的に重要な転機となった1980年クーデタの真相と、その後の「第3共和政」体制確立のプロセスを明らかにすることである。数回にわたる研究会を重ねた結果、従来言われてきたように、イスラム運動の活発化、あるいはイスラム政党の挑発的言動が主要因ではなく、むしろ、左翼の活動と、クルド人の分離主義運動に政府、治安当局が神経をとがらせていたことが明らかとなった。進歩的作家たちにクーデタが「トラウマ」として作用しているという、昨年度シンポジウムでの発言が、歴史研究の手法によって裏付けられたと言えよう。 第二の課題は、近現代トルコ文学史をまとめることであった。日本語で信頼できる文学史が存在しない現状に鑑み、客員助教授バフリエ・チェリを中心に、文学史に関する研究会を数次にわたって開いた。そこでチェリの準備した報告に、質問、コメントを加え、議論をしつつ原稿を完成させる努力が重ねられた。その結果、かなり詳細にして浩瀚なトルコ文学史が完成し、次いでその日本語訳が開始された。訳稿はまだ完成に達していないが、近い将来の刊行へ向けて鋭意努力が行なわれているところである。 最後に、これらに加えて昨年度行なわれたシンポジウムのプロシーディングスの刊行へ向けての努力も継続的に行なわれた。報告者の多くがトルコ在住のため、作業は困難を伴ったが、これもまもなく公表できるものと考えている。以上、二年にわたる本研究の遂行によって、日本における近代トルコ文学研究の発展に大きな一歩を踏み出すことができたと言うことができると思われる。
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