研究課題
本研究課題に関して、本年度は以下三点の成果を挙げ、国際学会でその成果を発表した。1.本研究の対象である『マハーバーラタ』第12巻には、人間のタイプを六種に分けて差異をつける独特の価値判断(「六色説」)が見られる。この考えは初期仏教経典と初期ジャイナ経典にも含まれている。これら三種のテキストの内容を比較することによって、「六色説」の起源が古代インドの金石学、冶金学に基礎を持つことを明らかにし、その成果を昨年3月にサンディエゴで開かれた全米東洋学界で発表し、聴衆から賛辞が寄せられた。(近く、論文として発表の予定)2.度重なる増広により膨大かつ複雑な内容をもつ『マハーバーラタ』第12巻の増広のメカニズムを考察し、同巻の増広が、「トピックとその解説」の繰り返しから構成されていることを発見し、8月にモスクワで開催された国際アジア・北アフリカ研究者会議で発表した。この知見についてもさらに詳細な検討を行って、いずれ論文として発表したいと考えている。3.昨年度の研究で、『マハーバーラタ』第12巻の大半を占める「ビーシュマ仙の教説」が第12巻の原本には存在せず、広大に挿入されたものであること、挿入された当初の「ビーシュマ仙の教説」は極めて短いものであったこと、同教説は現存する第12巻に見られる位置とは異なることを明らかにしたが、今年度の研究ではこれらの研究をさらに進め、挿入当初の短い教説、つまり、「ビーシュマ仙の教説」の原型を現存するテキストの中に発見することができた。これは、『マハーバーラタ』第12巻の成立過程を解明する上で極めて重要な知見である。この成果を昨年9月にドイツのハレで開催されたドイツ東洋学会で派票し、聴衆から説得力が高いとの評価を得ることができた。この知見についても近々論文にして発表する予定である。以上述べたように、本年度、本研究は一層の進展を見せ、予想以上の成果を挙げることができたと考えている。
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Proceedings of the Third Dubrovnik International Conference on the Sanskrit Epics and PurANas (Dubrovnik 2002) (印刷中)
インド思想史研究 16(編集中)
哲学研究 577(編集中)
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インド哲学仏教思想論集(神子上恵生教授頌寿記念論文集)
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