研究課題
本研究では、三年をかけて、世界最大の叙事詩『マハーバーラタ』第12巻の形成過程を解明し、同巻を古代インド文学史に位置づけるため作業を行ない、当初の目標以上の成果を挙げることができた。その成果は、2003年にヘルシンキで開催された第12回国際サンスクリット学会、2004年にサンディエゴで開催された第214回アメリカ東洋学会、モスクワで開催された第37回国際アジア・北アフリカ研究者会議、ドイツのハレで開催された第29回ドイツ東洋学会、2005年にクロアチアで開催された第4回ドゥブロヴニク国際サンスクリット叙事詩・プラーナ学会、ロンドンで開催された第14回国際仏教学会、あわせて6回の国際学会で順次発表した。これらの学会で発表した論文はすべて、当該学会の論文集ないしは学術雑誌に掲載の予定であり、その一部はすでに発表されている。(平成17年度分「研究発表」参照)三年間の研究成果を要約すると以下の点にまとめることができる。(1)『マハーバーラタ』第12巻の大半を占める「ビーシュマの教説」は同巻冒頭40数章に対する注解として後代に追加されたものである。(3)「ビーシュマの教説」はもともと極めて短いテキストであり、『マハーバーラタ』の原型では冒頭40数章の後半部に含まれていた。(3)「ビーシュマの教説」は三つの層(「王法品」「窮迫法品」「解脱法品」)から成るが、これらの層も先行する層の注釈として順次付加増広されたものである。(4)「ビーシュマの教説」は全体として、ブラーフマナ文献以来の古代インド文献注釈の伝統に属している。その意味で、現存『マハーバーラタ』は古代インドの叙事詩と文献注釈の二大伝統が合流して生み出された大叙事詩であり、その点で、叙事詩と古典文学の伝統の産物であるもう一つの叙事詩『ラーマーヤナ』と基本的に性格を異にする。(5)仏伝文学の最高傑作である『仏陀の生涯』(ブッダチャリタ)の前半部には『マハーバーラタ』第12巻冒頭部の影響が顕著である。従って、この作品は年代的に現存『マハーバーラタ』完成後につくられ可能性が高い。
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すべて 雑誌論文 (6件)
Proceedings of the Fourth Dubrovnik International Conference on the Sanskrit Epics and Puranas (Dubrovnik 2005) (編集中)
Proceedings of the 12th World Sanskrit Conference (Helsinki 2003) (印刷中)
Journal of Indological Studies, Kyoto 18(編集中)
The Journal of Philosophical Studies (『哲学研究』) 580
ページ: 1-11
Journal of Indological Studies, Kyoto 16-17
ページ: 195-200
Epics, Khilas, and Puranas : Continuities and Ruptures (Croatian Academy of Sciences and Arts, Zagreb)
ページ: 160-181