○宝巻研究のための基礎資料の調査蒐集 中国近世の物語り文芸のテキストである宝巻作品の内容は多岐にわたるが、その中でも宗教儀礼に関わる作品を重点にして、資料の蒐集を行なった。とりわけ、葬礼における死者の通過儀礼と密接に関連する、十王信仰や閻羅王の審判、目連の地獄めぐりなどに関わる資料を蒐集し、それらについて、語りの場とその参加者に視点を置いて、分析を加えた。具体的には、国会図書館所蔵の宝巻作品のうち、目連伝説に関わるものの調査を行ない、また、金光寺所蔵の「目連救母経」の写真撮影を行ない、敦煌石室遺書の「目連冥間救母変文」と、明清時期の目連宝巻との中間に位置する「目連救母経」の持つ意味について、分析を加えた。 ○中国民衆信仰についての基礎資料の整理 宝巻作品の多くは、民衆的な信仰の場で語られたのであるが、そうした民衆信仰について、宗教的叛乱などに結びついた宗派については研究が盛んであるが、日常生活の中での信仰については、十分には分からぬ点が多い。広く漢民族全般の日常生活の中での宗教活動について見通しを得るため、胡朴安『中華風俗志』の索引を整理し、その主要な項目をデータベース化し、パソコン上で検索できるようにした。
|