今年度は、平成15年度〜平成18年度の4年間にわたる研究成果を報告書「民国翻訳史における西近代文芸論受容に果たした日本知識人の著作に関する基礎的研究」にまとめた。報告書は、中華民国時期の文壇或いは翻訳史の中で、日本知識人の著作の翻訳紹介が果たした役割を究明するために行われた調査研究の資料とその資料への考察によって構成される。また、報告書は二部から構成される。第一部は、日本語から翻訳された西洋近代の文芸・文学理論と文芸思潮論が民国文壇に果たした役割を評価しようとる基礎的研究の報告である。その中、中国知識人が著作した文芸理論書に日本知識人の著作が如何に影響を与えているかについて考察を加えた。この時、本間久雄、厨川白村、蔵原惟人などの著作の影響を特に挙げることができる。第二部は、民国時期の翻訳状況の中で、他の日本人の著作に比べ圧倒的多数の著イを、しかも系統的に、かつ再版を重ねて翻訳紹介された厨川白村(1880.11.19〜1923.9.2)を特に取り上げ、「民国文壇における厨川白村現象」と題して総合的に扱った発展的研究の論考である。ただし、第二部にはまだ草稿段階の論考も含まれ、特に「第八章厨川白村現象の終焉と回帰-日本・中国・台湾におレる評価の違いを視座に」については、現在執筆中である。
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