研究概要 |
本研究の目的は、アフリカのエイズの問題を文学がどう描いているのかを探ることです。 エイズの問題を正面から取り上げている英語によるアフリカ文学作品はまだ多くはありませんが、最終的には、ケニアのWamugundanのNice PeopleとMeja MwangiのThe Last Plagueを軸に、疫病に映し出された人間のさがについて考察したいと考えています。日本では、「アフリカに文学はあるの?」と聞かれることが多いのですが、文学作品は見事に政治や経済の局面ではとらえられない人間の何かを描き出しています。 2003年推計のケニアの平均寿命は約46歳に落ち込んだと言われていますが、エイズの状況は想像以上に危機的です。欧米や日本の資本と手を組む新植民地支配の構図のなかで、小作農や工場労働者などの貧しい層だけでなく、医者や弁護士などの富裕な層にも等しくエイズの犠牲者が出ています。Nice Peopleでは富裕な層に、The Last Plagueでは貧しい層に焦点が当てられ、いかに政治、経済の体制や西洋的な価値観とアフリカ的な見方の軋檪が、病気の蔓延を助長しているかが描かれいます。 本年度は、新植民地体制を批判・分析しているNgugiの作品のうち、Writers in Politicsを中心に、上記の両作品の舞台となったケニアの政治や体制の事情を分析して"Ngugi wa Thiong'o, the writer in politics : his language choice and legacy"を活字にしました。 また、WamugundaのNice Peopleを医学科2年生選択授業(講読)の中で取り上げ、現在そのねらいについて執筆中で、2004度に出版の予定です。 また、2003年度の本学医学部の大学祭で「アフリカと医療」のシンポジウムを行ない「アフリカのエイズ問題制度と文学」の発表を行ないました。(ホームペイジhttp://tamada.med.miyazaki-u.ac.jp/tamada/に掲載準備中)
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