本研究は、使徒諦録に含熱る演説を個々に取り上げて修辞学的分析を加えると共に、修辞学的規点から見た使徒言行録中の演説の全体曲特色を明らかにした。. 私の修辞学的研究の特色は釈義的であると共に、演説を修辞学的状況が要請する言語行為として捉え、「言葉による説得の手段」として聴衆に対する修辞的効果を重視していることである。従来の新約学研究では、使徒言行録中の演説は、演説者が誰であるかを問わず、初代教会の説教の一定の型を反映する没個牲的なものとされていたが、本研究により、それは演説者と聴衆、修辞的状況によって内容も語り方も様々に変化する極めて個性的な性格を持つことが明らかになった。また、使徒言行録中の演説は、ギリシア・ローマ世界の修辞法の影響と旧約・ユダヤ教的な修辞法の影響の両方が混ざり合っていることが明らかになった。 本研究の成果は、様々な学会発表や論文執筆の形で公表すると同時に、1冊のまとまった研究書の形で公表したので、日本の学会全体の修辞学的批評に対する認識を高めることが出来た。
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