(1)初年度なので、まずハングルウィンドウズ搭載のノート型パソコンと『朝鮮王朝実録』CD-ROMおよび関係資料をそろえ、小説『林巨正』の中で『朝鮮王朝実録』の記述が取り入れられている部分の抽出作業をはじめた。このデータをもとに両者の対比をおこない、来年度は小説の分析に入る。 (2)小説精読に必要な手続きとして、『林巨正』に使用されている数多くのことわざと慣用句を整理した。それらをすべて抜き出して表にし、意味、使用されている文脈、そして現在における使用状況を調査した。作業は韓国国際教育振興院の高明均氏と共同で行い、<『林巨正』ことわざ・慣用句用例一覧>(総173ページ)を作成、刊行した。この作業の結果、『林巨正』で使用されていることわざ・慣用句の中には、現在では形が変わっているか、あるいはまったく使われていないものが多数あることが明らかになった。 (3)洪命憙の生まれ故郷である槐山で毎年秋に開かれている洪命憙文学祭に招聘されて、洪命憙の東京留学時代に関する講演を行った。そのさい生存関係者にインタビューすることができた。また韓国での洪命憙研究状況についても調査をおこなった。 (4)洪命憙研究第一人者である祥明大学の姜玲珠氏と面談して、研究に関する有益な助言をえた。平成16年には姜玲珠氏に来日していただき、洪命憙の東京時代について共同で現地調査をおこなう予定である。
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