研究概要 |
1 鹿児島県黒島大里方言:2型アクセント体系のメカニズムを明らかにし,ラトビアで開かれた国際方言学者会議で発表した。文節形成も,複合も,派生も,活用もすべてその第1要素のA/Bによって決まっており,任意の1つの形の第1要素のアクセント情報があれば他の型も全部予測できる連鎖性があることを示した。その英文論文は現在印刷中である。 2 鹿児島県徳之島浅間方言:単純動詞が無核型の式のみによる対立であるのに対し,複合動詞アクセントは下降を含む型が現われ,3音節動詞に5つの対立,4音節動詞には6つ(可能性としては7つ)の対立がある体系であることを明らかにした。私の知るかぎり,奄美方言(おそらく琉球方言も含む)では複合動詞のアクセントを扱った最初の論である。 3 青森市方言:日本語諸方言中,類を見ない多単位形をもつこの方言の複合名詞アクセントを整理し,多数の資料とともにその出現条件を明らかにした。その内部に複合語,限定性の強い要素,外来語などの「目立つ要素jがあれば,他は要素ごとに切っても複合語全体のまとまりが維持される方言であると位置付けた。 4 鹿児島県枕崎市方言:特異な2型アクセント体系であるこの方言については,これまでの浜言葉の他に,麓言葉についても調査し,『枕崎地方方言集』を編んだ著者から直にその全項目のアクセントを聞き出した。結果は近く発表の予定。 5 その他:沖永良部島和泊方言・皆川方言など,奄美の数地点で長い複合名詞のアクセントを調べた。
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