(1)平成15年度から17年度の間に毎年夏期にジュネーヴ大学公立図書館でソシュール自筆草稿生成批評版(自筆草稿の状態をできるだけ忠実に復元し、推敲のプロセスの解明を目指す)作成のため、オリジナルの草稿を閲覧し、解読・転写および注釈の作業を継続した。その一部はソシュール研究所を主催するFrancois Rastier氏のサイトで電子テクストの校訂版として6月下旬以降順次公開される予定である。草稿調査の過程で「言語の科学」に関する新たな草稿の存在に気づいたために、3年間で予定していた草稿の解読転写は、70%にとどまった。この領域では、フランスで2002年にガリマール社から刊行された校訂版『一般言語学の著作』にはなぜか収録されていない自筆草稿もかなりの量に達する。こうした草稿の発見自体が、研究成果の一つでもあることを強調しておきたい。 (2)このフランス語版と並行して日本語での校訂版を2年後に刊行する予定である。このフランス語と日本語による文献学的な生成批評版の作成には、ソシュールの推敲過程の分析を註として付す予定である。しかしガリマール版では註もなく、本文にも各頁に誤読が散見される杜撰な校訂版であることがこれまでの調査で判明している。 (3)以上の成果は、2006年11.月に名古屋大学で予定されている国際シンポジウム「ソシュールとテクストの科学」および2007年6月にジュネーヴ大学での国際シンポジウム「ソシュール革命」で発表される。
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