2005年9月後半の二週間、ルクセンブルクに滞在し、ルクセンブルク語(以下L語)の教育あるいは研究に従事している人たちへインタビューを行うため、次の施設を訪問した:小学校1校(6年生のクラス訪問も実施)、リセ・クラシック2校(うち1校では1年生のクラス訪問も実施)、ルクセンブルク大学(フェーレン教授)、王立研究所言語学部門(ベルク氏)、ルクセンブルク言語センター(前所長のベントナー氏)。また、国会議員(民主党)で前教育大臣のアンヌ・ブラセール氏と会見し、彼女が推進しようとした外国人児童のための教育政策について質問することができた。 上記の人たちへのインタビューから特に以下のことが明らかになった。 ・北部地方では日常、L語の標準語ではなく地域変種が用いられている。学校劇の台本が地域変種で書かれる場合もある。 ・これまでの予想と異なり、小学生(12歳以下)でも例えばメールなどをL語で書くこともある。また、リセでは生徒が教師へメールを書く場合、多くはL語である。 ・L語自体がドイツ語の影響を受けて変化していくことに対して、会見した多くの人はそれほど抵抗を示していない。むしろ、フランス語を話す機会が増えたことによって、フランス語自体がルクセンブルク特有のものになっていくことに危機感を覚える人もいる。 今年度は本来、ドイツ語の影響を強く受けたL語の表現に対するルクセンブルク国民の意識調査を目標に掲げていたが、残念ながら、そのための準備が整わず、実施することができなかった。今後の課題としたい。
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