研究概要 |
本研究成果報告書においては,Inoue(2001a, b)以来提案してきた概念構造における二つの空範疇(i)α,β,γ…,(ii)Φについて,その存在を英語音声放出動詞,To-不定詞補文構造,中間構文において検証を試みるとともに,統語的空範疇,とりわけPROとの関わりを考察している。 音声放出動詞に関しては,その概念構造に二種類の空範疇を用いた表示を提案し,それを支持する論拠を示した。その結果,二つの空範疇を立てるならば「行為」も「使役」の一種として扱うことができることである。その結果は,主語が動作主である場合とそうでない場合の相違,この種の動詞が任意的に伴うSourceやGoalを示す表現との共起,単一の音声表出動詞の構文とそれに対応する同属目的語構文との関係などが,的確に説明されることになる。 To-不定詞補文構造に関しては,従来統語上義務的コントロール動詞と言われているforceやpromiseなどのto-不定詞を取る動詞構文が,(i)のタイプの空範疇を用いてどのように概念構造表示され,統語構造と連結するかを議論している。その考察の結果としては,従来統語構造で扱われてきた,subject control及びobject control現象は(i)のタイプの空範疇で的確に説明できるということである。 中間構文に関しては,(ii)のタイプの空範疇を用いた概念構造表示を提案し,その表示がどのように統語構造表示に結びつくかを議論している。結論としては,このような分析によるならば,中間構文の特性や統語構造への写像が適切に捉えられるばかりでなく,擬似的中間構文など関連構文との関係,中間構文の状態性などについても適切な説明が与えられることになる。 従って全体としては,統語上の義務的及び随意的コントロール現象は,それぞれ,(i),(ii)が関わる現象の下位集合を成すのではないかとの仮説に至っている。
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