研究概要 |
名詞句表現の中で可算・不可算の区別,単数・複数の区別,総称・不定表現の区別に注目して先行研究を収集・検討し,英語・ドイツ語・日本語などの言語の名詞表現の統語構造・意味特性を分析した。とくに日本語について形式意味論の枠組みを基礎にして,日本語の名詞に付加される複数形態「たち」の意味を調査・分析した。「たち」は連想的にも使える点で純粋な複数よりも意味が広いが,純粋な複数個体も指示しうることを意味論的に明らかにした。この成果の一端は以下の口頭発表(共著)で発表した:Masashi Hashimoto & Mitsunobu Yoshida(2003):"Zur Semantik der pluralischen Nominalphrase im Japanischen"(Linguisten-Seminar Kyoto,2003,8月.日本独文学会語学ゼミナール。同論文は日本独文学会国際誌Neue Beitrage zur Germanistikに投稿の上,採用が決定されている)。また,キェルキア(1998)が提起した「名辞写像パラメータ」による冠詞の有無との関連(英語対日本語タイプ)の言語類型を検討し,その問題点を明らかにした。即ち,[+項,-述語]タイプとされる日本語では決定詞(冠詞)も複数形態の存在も予測されないが,実際には複数形「たち」が存在し,上記の言語間パラメータの修正が必要であることを示した。この成果は部分的に論文「冠詞の意味論」(月刊『言語』2003年10月号)において発表した。
|