研究課題
平成17年度は、平成15年度に波照間島において行った臨地調査で得られた資料と平成16年度に竹富島において行った臨地調査で得られた資料を分析し、比較検討した。その結果、両方言とも老年層が伝統的方言をかろうじて保っているが、竹富島方言のほうが、失われていく速度が早いことがわかった。その原因としては両方言とも近年、観光化され、島民が非常に多くの観光客に接するようになったことがある。特に竹富島は石垣島から船で10分という位置にあるため団体客も増加している。民宿にアルバイトの若者が住み込みで働くようになっているため、日常の会話も共通語が必要とされる場面が増えている。さらに、竹富島は人口が島外出身者も含めて300名ほどに減っているという事態も大きい。波照間島は約700名の人口があり、島外者の割合が少なく方言使用の場面もまだ多い。上記の理由から平成17年度は緊急度が高い竹富島方言の音声資料を保存することとした。竹富島方言は中舌狭母音と前舌狭母音の区別がほとんどなく、従来から報告されていた中舌母音の痕跡も観察しづらい状態である。また、ア母音が中舌的に発音されることがある。喉頭化子音も話者によっては非喉頭化子音との区別が曖昧になっており、伝統的な音韻体系は次第に失われつつある。一方で、「鞍」や「枕」は[p*a][napp*a]となっていて、fからpへの変化が起きることが認められる。鼻母音については個人差はあるものの、以前から報告されていた5種類が維持されている。このような特色を示すため、コンピュータを用いて録音資料を編集して、資料を音声記号化する作業を行った。これにもとづき、音声資料のCDを300部作成し、方言の概説および音声記号による音声資料を付した。
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The Third Conference on Japanese language and Japanese Language Teaching. Proceedings of the Conference, Rome, 17-19^<th> march, 2005.
ページ: 290-302
日本音響学会誌 61巻9号
ページ: 557-562