研究課題
基盤研究(C)
平成15年度は八重山方言の中から波照間島方言を選び臨地調査を行った。音韻については、半広中舌母音と半広舌母音の区別が曖昧になっている状態が認められ、また半広母音と狭中舌母音との区別が曖昧になっていることも観察された。また、名詞と助詞の「は」格の助詞との融合が少なくなっていることが分かった。また、従来無声子音で始まる拍に有声子音で始まる拍が後接するときに、有声子音が無声化するという報告があったが、無声化の傾向がやや弱まっていることが観察された。平成16年度は八重山方言の中から竹富島方言を選んだ。研究協力者1名を得て、臨地調査を行った。音韻・アクセント・動詞の活用などについて従来の報告にある項目を中心に調査した。音韻については、中舌狭母音と前舌狭母音の区別がほとんどなく、従来から報告されていた、中舌母音の痕跡も観察しづらい状態であることが認められた。喉頭化子音も話者によっては非喉頭化子音との区別が瞹昧になっており、伝統的な音韻体系は次第に失われつつあるという、事前の予測が確認された。ただし、「鞍」や「降る」は[p?a][p?ui]となっていて、φからpへの変化が起きることが認められ、最近の琉球方言の音変化の議論に有力な材料を提供する資料が得られた。鼻母音については個人差はあるものの、以前から報告されていた5種類が維持されていて竹富方言の特色となっていることが確認された。高年層の話者5名を対象に音韻・アクセントを中心として竹富方言の特色を録音・録画した。平成17年度は、平成15年度に波照間島において行った臨地調査で得られた資料と平成16年度に竹富島において行った臨地調査で得られた資料を分析し、比較検討した。その結果、両方言とも老年層が伝統的方言をかろうじて保っているが、竹富島方言のほうが、失われていく速度が早いことがわかった。上記の理由から平成17年度は緊急度が高い竹富島方言の音声資料を保存することとした。
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音声研究 10巻・1号
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