本年度は、ブラガ写本(正本)のデータ入力に関する予備調査と、ブラガ写本デーヴァナーガリー文字転写本のうち、『マハーバーラタ』のデジタル入力を行なった。 ブラガ写本Codices771-772の写本のマイクロフィルムからの印影を所蔵する、ゴア大学コンカニ文学科名誉教授オリヴィーニュ・ゴーミシュ博士を訪問し、印影を参照しながら写本の特徴やブラガ図書館での所蔵状況について情報を収集した。本研究においては、ローマ字転写されたコンカニ語テキストに付された音声補助記号の解釈がたいへん重要であるが、印影を再コピーした場合の情報欠落が心配されるため、ポルトガルからマイクロフィルムの直接の印影を入手するほうが望ましいという結論に達した。また、南山大学丸山徹教授が刊行したリベイロの16世紀コンカニ語-ポルトガル語辞書手書き写本における区別符号と、ブラガ写本における区別符号が、ほぼ対応しているということを確認したが、これについてはさらに精密な調査が必要である。 デーヴァナーガリー転写本のデジタル化については、出版の際のデジタル原本の入手が困難であることを確認し、新たに入力する方向で検討した。特殊な結合文字が含まれていないことから、コード体系としてはUnicodeを採用することとし、デーヴァナーガリーと区別符号付ローマ字の転写ユーティリティーを作成し、さっそくプラタープ・ナーヤク氏による転写本の入力に着手した。来年度は、このデジタル化資料の校正を依頼する予定である。
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