研究概要 |
ソグド語の記述文法の提出するための準備として本年度は下記のような作業を行い一定の成果を得た. 1)新資料の発見:2003年8月に新たに西安で発見された西暦580年の紀年をもつソグド語と漢文のバイリンガルの碑文を解読した.31行に及ぶ碑文で紀年があることから、ソグド語の歴史的な発展を考える上で非常に重要な資料であることが判明した.この碑文の内容は2004年4月に北京で行われる国際学会で発表する予定である. 2)借用語についての検討:ソグド語に導入された借用語としてはインド語からの借用語が最も多いが,ベルリンにあるソグド語訳された仏典のいくつかの原典を比定することによって,いくつかの借用語をあらたに発見した.そしていくつかの借用語は実際には借用語ではなくforeign form「外来形式」に分類される定着度のきわめて低い要素であることが判明した. 3)最も遅い時代のソグド語資料の確定:ソグド語は死語であるがいつまで使われていたのかは分かっていない.現在知られている限り最も遅い資料は1025年の碑文であるとされたいたが,その碑文の年代が実際には1026年であることを確定した.またそれより遅い資料が存在することも判明した。ウイグル人が使っていた『千字文』の表紙に書かれた落書きだが,この『千字文』それ自体の奥書を1031年に確定することができたので,問題の落書きはそれ以降である. 4)ソグド語の文法入門書の準備:ソグド語を教えることがあり,初心者用に練習問題付きの文法を書いた.これは当然のことながら記述文法の観点で書かれており,将来大いに利用されるであろう.
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