16年度は、15年度に引き続き、若者の携帯メール利用の質的研究を行なった。大学生男女(平均年齢21歳)の間で交わされた128件のメール会話(ひとりの相手にメールで送受信された一連のメール)、総メール数651件を分析した。今年度は、メールの中で「話しことば」がどのような「書きことば」を使って「話しているように書く」ことを実現しているかを見た。「話しことば」らしさは、日本語が4種類(漢字、カタカナ、ひらがな、ローマ字)の「書きことば」をもっていることが多様な表記の自由さをもたらし、それが本来の「書きことば」では不在であるプロソディーやパラ言語の表現をある程度可能にしている。また携帯メールに見られる「文字遊び」の工夫と絵文字・顔文字などの視覚に訴えるさまざまな表記が、「話しことば」にもない表現を可能にしている。総じていえば、携帯メールは、「話しことば」でも「書きことば」でもない、ハイブリッドであるといえよう。16年度は、主にメールの内容分析を行なった。 学生の携帯メールを収集することによって、指導の学生が日本語に気づき、携帯電話をはじめとするメディアの存在とその客観的見方が育つことをねらった。昨年に続き、『日本研究究報告2-携帯メールのコミュニケーション研究:演習クラスの活動と教育』を刊行した。
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