17年度は16年度に引き続き、若者の携帯メール利用の実態をアンケート調査と実際に交わされたメールの質的分析を用いて分析した。また、携帯メールを指導の材料にした日本語学教育の可能性を探った。 アンケート調査は、携帯メールにおいて方言がどのように使われているか、とくに自分の母語でない方言を使う実態について大学1年生を中心とした100名に意識調査を行なった。結果として、自分の母語ではない方言が携帯メールでは気軽に使われており、お互いの親密感を増したり会話のノリを高めたりする効果として使われていることが明らかになった。また、携帯電話の発達が方言使用者に与える影響(いつどこにいても方言地域の話者とつながることができる)や方言意識が変化してきている(悪印象が減少しつつある)ことも明らかになった。 実際の自然データでは、大学生男女(平均年齢21歳)の間で交わされた157件のメール会話(同一の相手に同一場面で送受信されたメールの人まとまりを1メール会話とする)、総メール数932件を分析した。今年度はとくに、筆者が絵記号と呼んでいる(記号、顔文字、絵文字)の使用実態について、モダリティの観点からその位置や意味・機能の観点から明らかにした。 学生とともに携帯メールを収集・分析することにより、若い世代での携帯メールの実態がより明確に把握できた。いっぽう学生にとっては身近な日本語の特徴や変化に気づき、それを材料として研究を進めていくことで日本語を深く知るきっかけとすることができた。 昨年に続き、3年連続で学生との共同研究をまとめた報告書(『日本研究究報告3-携帯コミュニケーションの諸相と変化:演習クラスの調査・分析』を刊行した。
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