平成15年度から平成16年度までの課題は、「『あいさつ表現儀礼全国地図』の解釈研究及び国際交流」である。年度当初に「科学研究費補助金交付申請書」の「本年度の研究実施計画書」で、研究計画を書き記した。即ち、506調査地点について、調査票の全データを電子化する作業に、殆どの経費を使用した。コンピュータ言語地図を作成するために、資料をパソコンに打ち込む作業が必要だったのである。予算の半分以上が、その作業の謝金に当てられた。残りのお金で、白地図の印刷を行った。これは、コンピュータ言語地図と併用して、ゴム印の地図も作成する必要を認めてのことである。更に、コンピュータ言語地図の作成上、技術支援を受ける必要があり、大阪から講師を招いて、講習会を実施した。進んで、本研究の担当者は、世界最大のアメリカ言語学会に出席し国際交流の成果を収めた。 特に日本では過去三十年に亘って言語学の神様と見なされ、模倣と追随の絶えない怪物、チョムスキー及びハレが肉声で発表する時には、二千人が静聴した。四日間の国際会議では、その他、認知言語学、地名学、人名学、ピジン・クレオール学、社会言語学、心理言語学、北米言語科学史学、原住民言語学などの広範な研究発表を聴き、研究者と交流した。また、本研究代表者の専門である方言学の領域では、旧知のプレストン教授の幅広い活躍に注目した。 直截に、米国における最先端の知見に接し、筆者の研究の独自性を自覚出来たのは、収穫であった。
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