本年度は、静岡県賀茂郡松崎町池代において言語体系変化についての調査を行った。調査地点を含む伊豆半島南西部地域は、伊豆南部特殊アクセントと呼ばれるようにアクセントの面で興味深い地域である。今回の調査地点と同じ池代では、一昨年度方言談話を収録しその文字化を行った。そして、その資料を基に昨年度は談話におけるアクセントを分析した。本年はその談話資料にみられるアクセントとの比較、さらに世代差をも見るために読み上げ式などによる調査を行った。その結果、若い世代(今回の調査では30代以下)では、相当程度東京語と同じアクセントに変化し、かつ安定した発音になっていることが確認された。しかし、そのような若い世代でも、助詞が後接する場合としない場合のアクセントではずれがあり、助詞が後接する場合には、下がり目が1拍後ろに移るという高年層によく見られる現象が、高年層より少ないとはいえやはり見られるという状況を確認することができた。 本年度の池代における調査ではアクセントのほかに、東京の若い世代が使用するジャンと関係があるともいわれる終助詞ジャー、準体助詞ガ、授受動詞(主としてクレル)、推量表現(ズラ・ダラ・ラ・ベー)の用法の確認およびその世代差についても調査した。さらに高年層においては様々な形で現れる母音連続について、音響分析を施すための資料となる発音を録音し、分析を施している。 また、本年度が本研究の最終年度に当たるので、報告書作成のため初年度からの調査結果を整理分析した。
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