2003年度は、大きく2点の研究調査と成果発表を行った。 まず、1点目は、これまで申請者が行ってきた首都圏方言を対象としたアクセント調査データに基づく、研究論文の発表を行った。それが、「首都圏方言における形容詞活用形アクセントの複雑さが意味するもの-「気づき」と「変わりやすさ」の観点から-」(『語文』116・日本大学国文学会)である。首都圏域で複雑な言語状況となっている形用詞活用形アクセントをとりあげ、「気づきにくく変わりやすい方言」の特質について検討を加えた。従来、アクセントは、言語事象のうちでも「変わりにくい」ものの代表として取り扱われてきている。しかし、当該論考では、フイールドワークデータと音声アンケート式調査によるデータ、先行研究データを用い、「変わりにくい」というアクセントの性質に疑問を投げかけた。 次に、さらに首都圏の言語として、重要ながら、これまでほとんど調査されてこなかった、東京の「新山手」地区の代表である、世田谷区の言語調査を、本務校の授業とリンクさせながら中学生長と・高年層調査を実施した。一部結果について、『世田谷言語調査報告書』(私家版)として、刊行した。また、調査協力者へのフードバックを兼ねて、HP版の報告書を本務校学科HPにも掲出した(世田谷のことばhttp://www.chs.nihon-u.ac.jp/jp dpt/field03/)。
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