首都圏方言を中心に「気づき」の程度と言語変化というテーマから研究を進めてきた。「気づき」と「言語変化」の関係には、次の4パターンを想定し、それぞれのパターンによる特性を検討したいと考えた。 (A)「気づきやすく変化しやすい」/(B)「気づきやすく変化しにくい」 (C)「気づきにくく変化しやすい」/(D)「気づきにくく変化しにくい」 (A)のケース・スタディとして、東京首都圏生育者の「関西弁」受容や、ケータイ・メイルなどに特徴的に現れる「母方言」「ジモ方言」「ニセ方言」などをとりあげた。また、(C)のケース・スタディとしては、従来(D)と考えられてきたアクセント事象を取り上げた。とりわけ、意識しにくいアクセント事象として形容詞活用形アクセント型を取り上げた。イントネーション事象として、形容詞活用形アクセント型変化とも一部連動する「とびはねイントネーション」をとりあげた。これは、「気づきやすく変化しやすい」側面をもつ事象である。 一連の研究により、語彙は「気づきやすく変わりやすい」、流行的あるいは文末イントネーションも「気づきやすく変わりやすい」ということが確認された。アクセントについても予想したように「気づきにくく変わりやすい」という側面を持つことは確認された。これは従来アクセントが「気づきにくく変わりにくい」とされていたこととは異なる。ただし、その「変わりやすさ」はある同一の体系内において、という条件がつくようである。この点は今後の課題としたい。
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