本年の成果の中でも、特に、(1)日本語方言の気候境界線の文法・音韻での補充、(2)中国の河川名「河」「江」の解釈、(3)日本語・中国語・朝鮮語における南北での音韻対応*kw-pの指摘、(4)東アジア文化の気候境界線の事例の追加、(5)ヨーロッパ言語における気候境界線のはじめての指摘、が重要な研究成果と考える(安部2006.3ほか)。以下箇条書きに記す。 1、次の学会と公開授業で成果発表を行った。 (1)東北アジア文化学会(韓国)第10回国際学術大会シンポジウム招聘基調講演(学習院大学)、2005.6.11.「モンスーン・アジア文化圏の中の東北アジアの位置」『断絶と交流の東アジア、その21世紀的展望(東北アジア文化学会第10回国際学術大会要旨集)』 (2)群馬県立女子大学、公開授業、2005年11月25日「"日本文化の十字路"としての群馬」 2、方言文献資料・語彙資料の基礎的データの収集と考察を行った。(1)近世初期中京地方資料の文脈付索引作成作業(2)近世前期俳譜語彙の収集(安部2005)(3)語源と語構成の考察(語源辞典)(前田富祺監修2005) 3、「気候境界線」に関して、新たに以下の指摘をした。(1)東アジア(日本語・朝鮮語・中国語ほか)の南北言語ないし方言の音声におけるある種の音声対応*kw-pの指摘。(安部2005)(2)日本語方言における気候線での南北対立が語彙のみではなく音韻(唇音性)・文法(-aru型動詞)にも及んでいることを指摘。(3)印欧語の「ゲルマン語派・ロマンス語派⇔スラブ語派」の対立境界線であることの指摘。(4)東アジアの気候境界線をもつ文化現象の追加指摘。(5)中でも中国語の河川地形名の「河」「江」の分布の指摘解釈。 4、モンスーン・アジアの文化特徴として、新たに、(1)犬の食用地域、(2)ある種の蛙の分布、を追加し得た。 5、日本語方言および東アジア言語における南北音声対応に関わる呼気の測定方法について検討した。 6、MA言語史研究の基礎となる言語調査として、台湾・サオ語の調査を行った。
|