研究概要 |
1)遊離数量詞構文の遊離数量詞とそれが修飾する名詞句の構成素性に考察を加え,(A)等位接続される語(句)は同じ範疇でなければならない,(B)被接続要素は統語的構成素である,(C)等位接続は構成素等位接続と非構成素等位接続に区別されるとの仮説を組み込んだ分析を提案し,次の2点を明らかにした。[1]名詞句+格助詞+数量詞(あるいは副詞)から成る連鎖は,名詞句・動詞句あるいは節という構成素を成し,範疇に着目することにより,川添(2002)が区別する帰一連鎖と非帰一連鎖を統一的に扱うことができる。帰一連鎖とは,構成素としての名詞句で,非帰一連鎖とは,構成素としての動詞句あるいは節である。[2]Koizumi(2000)の顕在的動詞上昇を仮定することで生じる構造的多義性が克服され,神尾(1977,1983)が提案するように,2種類の遊離数量詞の構成素性を認める必要がある。 2)結果節の外置構文(so...that構文)の構造的依存関係に考察を加え,Gueron & May (1984)では区別されることなく同等に扱われている(1a,b)の違いを明らかにした。(1)a. I ate so much food (that) I was almost sick. b. he saw so many new things he couldn't remember them all. (1a,b)の違いは,(1b)には名詞句so many new thingsと代名詞themが同一指示ではない場合と同一指示である場合があるということに起因する。島からの抜き出し・分離先行詞に関して,(1a)のような典型的な結果節の外置構文との比較から,(1b)のような,主節のsoが修飾する名詞句(so表現)と同一指示である代名詞を従属節内に含むso...that構文は関係詞節の外置構文であり,soとthatに構造的依存関係のある結果節の外置構文と峻別しなければならない。
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