本計画では、二つの形容詞特殊構文-tough構文(1a)とW類形容詞(wiseなど)構文(1b)-構文を取り上げ、これらの構文の構造を、既存の文法原理に基づき、係わる形容詞の語彙意味論から単純明快にかつ、新たな説明装置の導入なしに説明しようとするものである。 (1)a. This book is easy for her to read. b. It is wise of you to do so./You are wise to do so. 特にtough構文の派生は、40年来のパズルで未だに決定的な説明が提出されていない現状である。これらの構文について本年度は、(1)関連形容詞の項構造を明らかにするべくそれらの詳細な意味分析を行った、(2)項構造の統語構造への実現-すなわちリンキング規則の定式化、(3)リンキング規則による構文交替の説明、(4)義務的コントロールの語彙意味的説明、について一定の進展を見た。 Tough構文については、(1a)と(2)は基本的に叙述構造が異なることを明らかにした。 (2)It is easy for her to read this book. (1a)では、easy+to readが複合述語を構成し、独自の項構造をもち日主語this bookを叙述している。(2)では、主語は節to read this bookで、これをeasyが叙述する。 W類形容詞構文(1b)の二つの形容詞も根本的に異なる叙述機能を持つことを明らかにした。したがってこれらのwise文は統語的には無関係の構文となる。 以上のような形容詞の精密意味論から、これらの形容詞構文の諸特徴が説き明かされた。
|