研究概要 |
初年度は国内で出来る調査はすべて行なうことを目標とした。5月の近代英語協会特別シンポジウム参加(東京外国語大学)、日本英文学会発表(成蹊大学)、11月の日本英語学会シンポジウム企画・参加(静岡県立大学)、12月の日本中世英語英文学会シンポジウム企画・参加(東京外国語大学)を予定していたこともあり、資料の得られそうな大学の知人には前もって連絡の上出張し、あるいは学会開催中に会って情報を得た。また、同じテーマで研究している友人の訪問も受け、情報交換を行なうことが出来た。11月のシンポジウムはポーランドの文部大臣経験者であり現在はアダム・ミッケビッチ大学学長のヤチェック・フィシャック教授を招いて私が企画したもので、このpaperが今回のテーマの基礎となる研究である。Editionの段階での調査は終了し、方言的差異を示すlexemeの種類と機能による分類を提示した。これによって、従来取り上げられることがほとんどなかった機能語や接頭辞・接尾辞の変異、語順の相違などを重視することによって、Aタイプ(Mercian方言)とDタイプ(West Saxon方言)という簡単な対立の図式ではなく、Aタイプ内のB, Cの相違、Dタイプ内ではG, H, Jの類似性と、I, Kそして過渡期にかかるEの独自性がはっきりと認められた。しかしさらに言うなら、各々の写本の独自性も考えなければならぬことと、一写本内での統一性と不規則性も見られることが分かった。詳細な資料は最終報告にまとめる。 今回資料収集に協力して下さった天野政千代(名古屋大学)、大門正幸(中部大学)、尾崎久男(大阪大学)、中尾佳行(広島大学)、縄田裕幸(島根大学)、馬場彰(東京外国語大学)、樋口昌幸(広島大学)、保坂道雄(日本大学)、松本博之(豊田工業大学)、渡辺秀樹(大阪大学)の諸氏に感謝申し上げる。理論の資料については、残念ながら十分活用できたとは言い難い。
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