研究概要 |
本研究は,制約に基づく文法理論である最適性理論の枠組みから,日英語のアクセント体系に見られる共時変異および通時変化を適正に捉える統合モデルの構築を目標とする。この枠組みにおけるアクセントに関する先行研究では,日英語の体系を同じ土俵で比較対照させて,その共通性と相違を明らかにするという観点は皆無であった。また,日本語の全ての語種(和語・漢語・擬声語・擬態語・外来語・それぞれの複合語)を射程に入れた研究もない。 こうした状況にあって,本研究の今年度の成果は次のようにまとめられる。すなわち,1.日本語における平板化アクセントを含めた体系的な変異と歴史変化の説明・単純語アクセントと複合語アクセントの関係・英語アクセントとの比較などの点を解明したこと,2.特に,日本語における和語・漢語・擬声語・擬態語・外来語などの単純語アクセントとそれぞれの複合語アクセントとの関係を明らかにしたこと,3・音韻論・形態論を専門とする教官が在籍しておらずこの分野の図書が極めて少ない状況にあったが,本研究の遂行と他教官や学生に益するため,この種の図書を充実させたこと,4.本年度は日本語を中心に計画を遂行したが,来年度は英語に焦点を置くため,ブリティッシュコロンビア大学において最適性理論の最先端の知見を得つつ,現地にてフィールドワークを行い資料を蓄積したこと,などが挙げられる。 このような成果は来年度からの展開に生かすための基盤であり,日本語と英語の単純語と複合語のアクセントの対照研究,特に英語アクセントの共時変異や通時変化メカニズムの分析を更に進めるための布石である。次年度では,その成果を研究代表者が出版予定の『アクセントとリズム』(英語学モノグラフシリーズ,研究社)に成果を組み込み,その意義を広く世に問うつもりである。同時に,学会や研究会の出席・発表による努力なくして研究の発展は見込めないので,国内外での調査は特に継続的に重視する予定である。特に,海外での調査の場合には,英語アクセントの進行中の変化を調査するフィールドワークも当然ながら含まれる。
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