平成16年度は、本研究課題実施の2年目に当たり、平成15年度の準備段階における作業を基に、主要な論点を整理する段階と位置づけている。2003年に出版されたFarkas and de Swart(2003) The Semantics of Incorporation(CSLI)の編入と名詞の意味解釈に関する研究、及び2004年に出版されたChung and Ladusaw(2004) Restriction and Saturation(MIT Press)で提案された不定名詞句と動詞の意味的構成に関する分析について、夏期休暇中に集中的に検討を行い、再帰代名詞の意味解釈に応用すべく、自説の再検討を行った。その結果、再帰形態素の意味解釈に見られる特質については、名詞の意味解釈一般に関わる規則性として捉えることが可能であるという認識に至った。その結果は、平成17年度中に開拓杜より刊行予定の論文集に掲載される予定である。 9月には、母校である米国マサチューセッツ大学アマースト校を訪れ、数名の研究者と再帰代名詞に関する研究内容について意見交換を行った。今後の研究の方向性などについて、貴重な示唆を得ることが出来た。 また、研究資料として再帰形態素に関する研究書及び関連言語学書を購入した。昨年度に引き続き、代名詞解釈や削除に関するものを読み、照応全般に関する問題の確認を行った。再帰形態素の問題を照応全般の問題にどのように位置づけるべきか、英語に限らず出来る限り数多くの言語からのデータ収集なども試みながら、今後も引き続き検討を重ねていく必要がある。
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