研究概要 |
本年度の研究関連の実績は以下の通りである。 現代英語において自動詞の他動詞化が深く関わっている同族目的語構文、動作表現構文、One's Way構文のうち本年度は、同族目的語構文を主に取り上げ、英語の周辺構文の解明に特に有効である現代英語の世界最大規模コーパスThe Bank of English (約4億6千万語)とBritish National Corpus (約1億語)更にWebを検索することにより、同族目的語構文の統語属性と意味属性の解明と、この構文についてまだ言われていない言語事実の発掘に努めた。その結果、同族目的語構文の基本形と思しきものと数種類の変種を同定できることが分かってきた。即ち、基本形は、a.動詞と形態的に同族の名詞が目的語位置に生起している。b.動詞と目的語名詞句との間にコンマがない。c.目的語名詞句が何らかの修飾語句を伴っている。d.動詞は自動詞のうち非能格動詞が用いられている。e.能動文であって受動文ではない。他方、変種がこれらの特徴のいずれかを欠いた形で存在する。今後は、これら基本形と変種を理論的にいかに分析していくかを考えていきたいが、とりあえず、本年度は、上記の研究成果を本報告書の別項に記載した論文の形でまとめた。更に、British National Corpusの検索ツールであるBNCWebについて、上記研究成果を上げる途上で、習熟したので、平成15年度名古屋大学大学院国際開発研究科公開講座「大規模コーパスと英語研究-British National Corpusを極める-」2003年9月4日-7日において担当講師を務めることで学会および社会に貢献することとした。更に、上記構文の分析に必要になってくる動的文法理論に関して、上智大学名誉教授梶田優先生にご教示いただくために国内旅費をみつもったが、大規模コーパスと動的文法理論とは相性が良いとの判断から、先生からの教示を私だけで独占するより、広く公にも供したいとの意図から、本科研の共催という形で、公開講演会 梶田優先生「動的文法理論の考え方と事例研究」を名古屋大学大学院国際開発研究科に於いて開いた。更に、この公開講演会から得られた知見と上記の研究成果を合わせる形で、2004年3月8日-9日、熊本大学に於いて、シンポジウム「言語・英語研究とコーパス」を共催し、そこにおいて講師を務め、「多重的文法観と大規模コーパス」という表題で研究発表を行った。自動詞の他動詞化を考える上で必要になる言語の機能的な側面と概念意味論について、それぞれ、ハーバード大学とブランダイズ大学を訪ね、2004年1月6日から12日迄の期間、資料収集に努め、ブランダイズ大学Jackendoff教授からは貴重な研究上のご示唆もいただいた。 One's Way構文については、本報告書の別項に記載した論文の形で、梶田優先生の記念論集に研究成果を発表した。最後に、本科研との関係で、言語理論面で関連してくる中村捷著:『意味論-動的意味論』,開拓社,2003.の書評を依頼されたので『英語教育』で書評を行った。
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