今年度の本研究は、ほぼ交付申請書記載の年度計画通りに進んだ。 先ず、現代英語の現在完了形を、先ず完了形構造と時制とに分けそれぞれの意味機能を分析し、更に完了形の構成素のうち、haveを時制を担う点と意味的要素から主動詞とみなし、過去分詞の方は、haveに表される状態を特徴づける従の働きを持つとして構成素分析を行った。古英語、中英語の完了形や古英語から今日に至る迄の様々な過去分詞の用法を調べても「何かを修飾する働き」がコアであり中心的な要素であることに裏付けを得、計画書段階の仮説を一部修正し、完了形を「過去分詞の表す事態の生起により特徴づけられた状態」を表し、更に現在時制は、「その状態が時制の指す現在時で成り立っていること」を表すと分析した。この分析により、現在完了形と様々な副詞との整合性や、従来曖昧だった完了形と時制との関係を解明し、何故完了形と参照点までの継続的状態が関わることが多いか、完了形の使われる文脈や所謂Current Relevanceと呼ばれてきた概念の実態、等を明らかにできた。 今後は北欧を中心とした欧州諸語の完了形についても、通時的・共時的観点から更に研究を深める予定であるが、現時点では、yesterdayの類が現在完了形の過去分詞を修飾できない現象は、地理的・文法的に近いノルウェー語やスウェーデン語で英語と同様にみられ、より遠いフィンランド語、蘭語、フリースランド語、デンマーク語、独語、仏語、スペイン語等では場合によることから、過去分詞のtemporal profileの有無が、単純形等他形との機能分業の違いと関わる事を発見している。 成果は、裏面記載の雑誌掲載の解説1編、及び論文2編と、2003年7月にスペインで開催された国際認知言語学学会、及び8月の福岡認知言語学会にて口頭発表し、その際の貴重なフィードバックを受けた形で、国際学術雑誌への投稿論文を執筆し、現在仕上げの段階にある。
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