中英語(Middle English)頭韻詩における音の繰り返しの意義、文芸手法として果たす言葉の役割について、特に中英語の韻文や散文に口承様式の定型表現が存在したか、に関する研究で行った今年度の実績は以下のとおりである。 1.2度海外へ出かけ欧米の研究者と意見交換ができた。7月にはローマ国立図書館及びローマ市内の大学図書館で、関連の図書、雑誌論文、写本、ファクシミリ版、CD-ROM版などを収集した。また8月には米国で開催されたロマンス学会に行き研究発表やシンポジウムを聴き、大学図書館でも写本関連の資料と絶版になっている出版物のコピーを入手した。 2.平成16年12月武庫川女子大で開催された日本中世英語英文学会全国大会で研究発表をし、日本の研究者と意義深い意見交換ができた。発表題「Sir Gawain and the Green Knightにおける従属節と付加節--定型表現としての使われ方("Subordinate and Additional Clauses as Formulaic Expressions in Sir Gawain and the Green Knight") 3.テクストの入力と語順の分類に意外と時間と手間を取ることが分かったが、データベースの作成は順調に進んでいる。中英語頭韻詩における語の並び方を、行全体、後半行ごとに分析したものと、後半行の最初に来る語とその品詞により並べ替えたものと、ひとつの作品につき4種類のデータを用意し、定型表現といえる繰り返しの使われ方があるか詳細に調べている。来年度はこのデータ収集を夏までに終わらせ、分析の作業、論文に仕上げる作業に取りかかりたいと計画している。 4.今年7月英国リーズで開催される国際中世学会での研究発表に応募し、招聘が決まっている。これまでの研究成果を欧米の研究者に問い、資料などの収集にもあたる予定である。発表題"Habitual Use of Certain Syntactic Structures in the Second Half-Line of Middle English Alliterative Verse."
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