研究概要 |
今年度の研究実績は、(1)資料収集と整理,(2)予備知識の収集、(3)アンケートの作成と専門的立場からの助言の収集、である。 まず、収集した資料は、アイデンティティに関するもの(特に民族的アイデンティティに関わるもの)、定住外国人子弟の教育に関するもの(異文化間教育/国際理解教育/バイリンガル教育/日本語教育など)である。これらの資料から、特に日本に定住しているインドシナ難民1世・2世にとって,アイデンティティはどのような意味を持ち、どのようにして形成され、また変動するかの問題に関しての予測を立てた。 次に、予備知識の収集に関しては、来日して30年経つベトナム人親子3人、日本で生まれ育った20代のカンボジア人青年、10代に来日して20年以上を日本で過ごし,今小学生の子供を持つカンボジア人家族、から、それぞれ来日の経緯、日本で体験したことを中心にインタビューを行った。そこで明らかになったのは,日本社会が難民にとって持つ意味が世代によって大きく異なること、来日年齢が、母語保持、当人の受ける教育、人間関係、価値観などに大きく影響を与えるということであった。そして、それらのことが当人の民族アイデンティティにも強く影響を与えていることが予測された。 そこで、以上の資料分析結果とインタビュー結果とより、民族アイデンティティの変化と,それに影響を与える要因を探るアンケート調査を計画し、アンケートを作成した。作成に当たっては、インドシナ3国(ベトナム・ラオス・カンボジア)それぞれの代表者及び、20年以上にわたりインドシナ難民の定住を支援してきたNPO団体(神奈川県インドシナ難民定住援助協会)代表の計4名から助言を得た。質問項目の内容の妥当性,答え易い回答方法,さらに質問紙配布と回収の方法など,具体的な示唆を得た。 以上の予備調査を経てアンケートを作成し、翻訳まで終わっているのが現在の進捗状況である。
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