研究概要 |
本年度は、本研究で対象とする文法項目(結束性,テンス・アスペクト,モダリティなど)に関する、研究代表者及び研究分担者のこれまでの研究成果を整理し,本研究の理論的・記述的枠組みの構築をおこなう」ということをおこなった。枠組みの整備にあたっては,定延利之氏(神戸大学),澤田浩子氏(神戸大学大学院)の助言を得た。また,中国語を母語とする日本語学習者の作文資料の電子データ化に着手した。 庵功雄(代表者)と張麟声(分担者)は,日中両言語の指示表現に見られる相違を,指示表現に関する庵の理論を援用して説明することを試み、その内容を2回の研究会(平成15年10月12日・大阪大学,平成15年12月7日・京都教育大学)で発表した。また,その一部を,一橋大学国際共同研究センター国際研究シンポジウム「日中両言語における重なりと異なり-日本語教育の現場から-」(2004年3月27日・一橋大学国際共同研究センター)において,「日中両言語における文章レベルの異なり-文中における指示表現を中心に-」のタイトルで発表した。 井上優(分担者)は,庵と張の研究に触発される形で,日本語の「こ(そ・あ)れ」と中国語の"這(那)個"の単独用法(後に名詞をともなわない"這(那)個")の比較対照をおこない,"這(那)個"の単独用法が純粋な「指さし」の表現であり,"這(那)個+名詞"とは違って,指示対象が有する属性に言及することができない(その点日本語の「こ(そ・あ)れ」とは異なる)という見通しを得た。 森山卓郎(分担者)は,日本語の継続相形式の使用の背景にある原理について考察した。
|