研究課題
基盤研究(C)
本研究は、機能主義言語学のアプローチの枠組みで、物語談話におけるトピック管理に見られる学習者の母語からの言語転移、タスクの種類が及ぼす影響を明らかにすることを目的に実施した。日本語母語話者、韓国語、英語を母語とする学習者(中級・上級)からデータを収集した。データ分析の結果、日本語と類型論的に近似した韓国語を母語に持つ学習者にとって、母語に対応する助詞に関しては、中級レベルにおいて既に適切な使用ができているのが分かった。それに対し、日本語とかけ離れた英語を母語に持つ学習者は習得に時間がかかり、中級レベルでは助詞やゼロ照応の使用率が韓国語話者グループに比べ有意に低いのが分かった。また、非同時空間においてストーリーを構築するタスクの方が同時空間よりも文法性が高くなり、より明示的に指示対象物を言及するなど等、全グループにタスクの種類が物語発話に及ぼす影響が見られた。学習者には見られたが母語話者には見られなかった傾向として、タスク間での受身表現の使用数の違いが挙げられる。これも母語の思考のパターンが影響を及ぼしたものと考え、これらの全ての事象に関し、詳しく考察した。平成17年1月と3月には名古屋大学で「第二言語習得課程における母語の影響」というテーマで国際シンポジウムを行った。シンポジウムでは、本研究の結果の一部を発表した他、「言語転移」の歴史的変遷を始め、様々な分野における「言語転移」の事例報告・実証研究などについて学術的意見交換の場を提供することができた。科研報告書には、本研究代表者の論文、そして国際シンポジウムでの発表者である、研究協力者の先生方が執筆くださった論文などを掲載させていだだいた。2006年3月5日にサンフランシスコ州立大学でのInternational Conference of Practical Linguistics of Japaneseでも、本研究の成果を発表した。
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言語文化論集 第27-2巻(未定)
Studies in Language and Culture. (Graduate School of Languages and Cultures. Nagoya University) Vol.XXVII No.2.(in press)
Studies in Language Sciences 6 (Kuroshio Publisher) (to appear in 2006)