本研究は、従来の日本語教育の視点を「日本語学習者がどう学ぶか」を出発点として、学習者の習得過程を踏まえた指導や評価を考えることを提案するものであり、具体的には以下の3点を目的として行う。 1.国内(教室指導学習者・自然環境学習者)と海外の日本語学習者の発話データから、日本語の習得過程の全体像(日本語習得マップ)を探る。 2.学習環境による習得の違いを明らかにする。 3.学習環境別の評価と教材を作成する。 上記の目的の1.を踏まえ、本年度は以下の3点の作業を行った。 (1)国内の教室環境学習者(中国語話者3名・韓国語3名)の3年間の対話資料のデータ化 日本で1年間の語学学校での勉強を終え、その後専門学校生・大学生・研究生となった6名の3年間の縦断調査の48本(48時間分)の対話資料を書き起こしし、スクリプトデータとした。 (2)国内の自然環境学習書(マレーシア語話者1名)の3年間のデータ収集とデータ化 配偶者の日本留学に伴い来日したマレーシア人男性(工場勤務)の3年間の対話資料を書き起こしし、スクリプトデータとした。 (3)文字化データの分析作業:院生や学術研究員の個々のテーマである「自他動詞の使い分け」「否定表現」「格助詞」「モダリティ」の項目別に分析を行い、研究会において発表 数量的な分析と談話内容に関する質的な分析を行い、それぞれの特徴や傾向を報告した。(1)と(2)では、初期の習得傾向においてユニット形成の共通の傾向と異なる傾向が観察され、日本語習得マップの基礎的なデータが整理できた。
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