研究概要 |
1.一昨年から継続しておこなっている終助詞の音調の聞き取り調査を今年度もおこなった。「桃だよ」「やるね」のように,一語句の文に終助詞をつけ,終助詞の部分を,様々な音調で発話したものを聞いてもらい,各音声について,設定された場面での発話としてふさわしいと思ったら○をつけてもらった。今年度は,新たに東京,神奈川,大阪,兵庫,徳島,高知などでも調査を実施し,共通語としての終助詞の音調をより明らかにすることを試みた。「よ」の聞き手への反対意見や反発をあらわす低接平坦,「ね」「な」の回答要求における疑問上昇,感情表出における下降,「か」の回答要求をあらわす疑問上昇については,一部アクセントの地域差はあったものの,多くの回答者が選択しており,共通の音調として理解されていると言えそうである。同時に実施した留学生への調査では,日本語母語話者のように7割以上の回答者が同じ音調に集中することは少なく,ばらつきが見られた。以上については『香川大学研究報告第I部』125号(印刷中)にて報告した。 2.音声教育における終助詞の音調の位置付けを明らかにするため,日本語教師にアンケート調査をおこなった。52名の回答が得られ,その結果以下のことがわかった。(1)単音の発音と句末・文末音調については,音声教育の重要度の認識においても,また普段や過去の指導経験においても順位が高い。(2)文全体のイントネーションは重要度の認識は高いが,普段あまり指摘・指導する機会は少ない。(3)終助詞の音調と単語アクセントについては指導経験は少なくないが,重要度の認識において低い。(4)音声教育は単発的な指導が多い。以上については大阪外国語大学日本語日本文化教育研究会(2006.3.21)にて報告した。
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