研究概要 |
1.共通語としての終助詞の音調を明らかにするため,新潟,東京,大阪,広島,岡山,香川,徳島等において,終助詞の音調の聴き取り調査をおこなった。「桃だよ」「やるね」のように,一語句の文に終助詞をつけ,終助詞の部分を,順接あるいは低接の平坦,疑問上昇,アクセント上昇,下降,上昇下降などの音調で発話したものを聞いてもらい,各音声について,「「あれ,何?」と尋ねた相手に教えるとき」「「これは梅ではなくて桃だ」というつもりで言うとき」のように,設定された場面での発話としてふさわしいと思ったら○をつけてもらった。 過去に東京でおこなった調査結果と比較したところ,ほとんどの設定において,東京,広島,岡山,香川で共通にほぼ全員が選んでいる音調が認められた。これは,自分が使うかどうかは別にして,少なくとも聞いて理解できるという意味で,終助詞と音調と意味・機能の対応関係が共通語的なものとして存在することを示唆している。そのいっぽうで,低接疑問上昇の音調が,岡山,香川において多く選ばれる傾向があった。これは,岡山や香川では「よ」「ね」が低接であることが深く関係していると予測される。 2.日本語教育の現場で,終助詞の音調の教育をどう取り扱うべきかを探るため,日本語教師を対象にしたアンケートをおこなった。これは,日本語音声教育における終助詞の音調の指導の位置付けを明らかにすることを目的とするものである。音声項目の教育の重要度の認識は,1.単音の発音,2.文末・句末の音調の二つが高く,3.文全体のイントネーション,4.単語アクセント,5.終助詞の音調の順となるが,普段の指導・指摘や過去の指導経験については,単音の発音と文末・句末音調の次に終助詞の音調についての指導が多かった。また音声項目の指導は普段の継続的な授業ではなく単発的な指導が多いことがわかった。
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