研究課題
本研究は、日本語のことばの背景にある"常識"とその多様性の仕組を明らかにし、日本語教育に資することを目標としている。研究方法は語連想調査法を用い、30の刺激語を日本語で提示し、筆記型で回答してもらう。また日本語連想に対する母語の影響を調べるため、刺激語を各母語に翻訳したものでも実施。調査対象者は、日本語母語話者(国内の大学生)、及び8地域の日本語学習者(米国、エジプト、イタリア、中国、台湾、韓国、ブラジル、英国の現地大学生)。調査データの集計結果はweb上で公開中。URLは、http://www.asahi-net.or.jp/~dr4t-ogw/sayuri/rensou/rensou.htm平成17年度は、ブラジルの2大学、英国の1大学での現地調査を追加実施した。また、韓国語母語話者を対象に、学習者が自分自身で産出しない、またはできない連想であっても,他者がそのような連想をした場合に、共感できるか否かを測るテスト(エンパシーテスト)を実施した。3年間の研究調査によって確認できたことは、日本語を学習することにより、日本語という言語学的知識の獲得だけでなく、日本語のことばの意味の文化的背景に関わるもの、あるいは日本の事象に関する知識を、日本語学習者が深めていくということである。また、本研究結果として、現在のところ暫定的に言えることは、日本人の連想と学習者の日本語連想には共通している点が多く認められたことから、言語の違いを超えて、ことばの意味の背景には文化的共通性がある程度存在する、と考えられる。しかし一方で、両者の連想が異なる場合は、学習者にとって、事象の違いの類推の難しさがあり、両者のコミュニケーション場面で齟齬をきたすこともあり得る。したがって、両者の連想の異なる語彙グループが存在するということを提示することは、日本語学習者にとって有用な情報となり、そこから、自らの文化リテラシー(異なる文化・文化的常識への対応能力)育成への気づきを促すことを期待したい。また日本語教育の中に、文化知識を体験の中で取り込んでいくプロセスを重視した教育を取り入れることを提起するものである。
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The Third Conference on Japanese language and Japanese Language Teaching. Proceedings of the Conference, Rome, 17-19th march, 2005
ページ: 174-185