今年度は、これまでの研究の成果を対外的に発表することに取り組んだ。 まず、『大学教育学会誌』で、「プログラム評価」の基本概要をまとめ、筆者が実際に行った夏期集中日本語教育プログラムでの評価の事例を考察した論文を発表した。ここでは、プログラム評価の体系的な構造を説明し、事例では、留学生の日本語能力や日本文化・社会の理解能力の向上に対する満足度の評価を含むプログラム評価のプロセスを描き出した。 次に、評価コンサルタントビジネスなどで用いられている満足度と重要度を合わせて調査する手法を用いて、筆者が2003年に行った重要度・満足度評価の概要を、日本工学教育協会大会で発表した。この発表では、用いた手法のメリットとデメリットを明らかにできた。まず、メリットは、分析方法が簡単であることと、改善が必要な項目の優先順位が明確になり説得力があることである。デメリットは、各回答項目を重要度と満足度の二つの観点から判定するために、回答に手間がかかること、そして改善項目の優先順位はわかるが、不満の内容やその理由は別の手法で調べる必要があることである。 それから、論文「自己評価票を利用した日本語教育プログラム満足度評価」を発表した。この自己評価票は、プログラムの開始時と終了時に、留学生自身が各自の日本語および日本文化・社会理解の程度を自己判定し、その伸びの程度を踏まえて、満足したかどうかを尋ねるものである。さらに、プログラムに何を期待して参加したか、どのような点が不満であったかなどについても質問する。この手法では、単に「満足だったか」を尋ねるだけでなく、「満足」を取り巻く留学生自身の当初の期待や、彼らが実感する能力の伸びのようすを明らかにすることができるので、満足の様子を多面的に描き出すことが可能となった。
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