朝鮮における徴兵制実施計画発表(1942年5月9日)に伴って推進された「国語」普及政策に関して、資料の収集・分析を進めた。調査対象とした主たる資料は、「府尹郡守会議報告書綴」(朝鮮総督府行政文書)、「京城日報」(朝鮮総督府機関紙)、「毎日新報」(朝鮮総督府朝鮮語版機関紙)、「朝日新聞朝鮮版」、「大阪毎日新聞朝鮮版」、『国民総力』(国民総力聯盟機関誌)、『朝鮮』(朝鮮総督府機関誌)、『文教の朝鮮』(朝鮮教育会機関誌)、『日本語』(日本語教育振興会機関誌)、「大野緑一郎文書」(国立国会図書館憲政資料室蔵)などで、特に1942年を前後する時期の資料に焦点を当てた。 これらの資料をもとに分析を進めた結果、徴兵制実施計画が「皇民化」政策をより一層推進させる契機となり、その主要な柱として「国語」普及政策が位置付けられていた状況を明らかにすることができた。 当時の「国語」普及政策は「国民総力運動」として進められた。具体的には国民学校生徒を通じて各家庭内での「国語」普及を図る「一日一語運動」、「国語常用の家」の設定、「国語常用章」の佩用、罰札の採用、朝鮮語使用の抑圧・禁止の諸形態、「国語」習得程度に応じたさまざまな賞罰の適用など、当時の「国語」普及運動のさまざまな様相を明らかにすることが出来た。 これらの研究結果は、『朝鮮総督府の「国語」政策資料』(関西大学出版部、2004年3月30日、690ページ)という単行本の形にまとめて公刊した。また、環日本海学会第9回学術研究大会(2003年9月28日、於:北海学園大学)において、「太平洋戦争下における朝鮮総督府の「国語全解・国語常用」政策」という発表題目で研究発表を行った。平成16年度は、「国語」普及政策の展開様相に関して、より具体的な分析を進めることにしている。
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