平成15年度の研究成果として編著書『朝鮮総督府の「国語」政策資料』(関西大学出版部、2004年3月30日、667頁)を刊行したが、ここに収録した「毎日新報」は、ソウルで刊行された影印本から朝鮮総督府の「国語」政策関連記事を収集・整理したものだった。平成16年度は、早稲田大学図書館が所蔵する「毎日新報」を調査し、その「京城版」や「日曜版」から更に記事を収集する作業を進めた。そして、朝鮮総督府が地域末端において実施した「国語」政策の様相、すなわち、出版物・ラジオ放送・公共交通機関・飲食店・職場などでの朝鮮語使用の統制、「国語」不使用者への罰則適用、日・朝混交語(ちゃんぽん語)使用の奨励、罰札使用の様相などに関する当時の施策の状況が明らかになった。 また、平成15年度に韓国の政府記録保存所で収集した朝鮮総督府の「昭和17年度府尹郡守会議」における諮問答申「婦人啓蒙運動ニ関シ管内ノ現況ニ鑑ミ将来之ガ強化ニ対スル具体的施策如何」を整理・分析した。この資料分析から、朝鮮総督府は徴兵制施行のために、徴兵適齢期の青年に対する「皇国臣民化」教育のみならず、婦女子たちを対象として「中堅婦人指導者養成講習会」、「婦人指導者錬成講習会」、「大日本婦人会」における「婦人常会」、国民総力朝鮮聯盟部落連盟への「婦人部」の設置など、地域末端での「国民総力体制」下での「軍国の母」創出の試みの具体的様相を把握することができた。 なお、平成17年3月中旬には、釜山市立市民図書館が所蔵している「釜山日報」と「朝鮮時報」から朝鮮総督府の「国語」政策関連記事を収集し、今後、「昭和17年度府尹郡守会議報告書」で提起された「国語」政策のより具体的な実施状況を明らかにしていく計画である。
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