本研究は、徴兵制施行計画発表(1942年5月)前後に朝鮮総督府によって展開された「国語」普及政策について考察することを目的とし、国民総力朝鮮聯盟を運動主体とした国民学校や社会教育における「国語常用・国語全解」運動についての資料調査・分析を行う旨を補助金交付申請書に記載した。 平成15年度は「平成17年度府歩郡守会議報告書綴」(韓国国家記録院所蔵)を資料調査し、「国語常用運動」推進に関する9道156府・郡の諮問答申書を収集・整理した。これに、「京城日報」、「毎日新報」、「朝日新聞朝鮮版」、「大阪毎日新聞朝鮮版」等の日刊新聞、『日本語』、『文教の朝鮮』、『朝鮮』、『国民総力』等の各種団体機関誌から収集・整理した関連記事と解説を付した形で著書『朝鮮総督府の「国語」政策資料』(関西大学出版部)を刊行した。この研究は植民地時代末期の「国語」政策に関する行政資料を初めて本格的に紹介したもので、今後、植民地政策研究の発展に資するところが大きいと思われる。また、環日本海学会において「太平洋戦争下における朝鮮総督府の「国語全解・国語常用」政策」という題目で研究発表を行った。 平成16年度は資料の分析・考察をさらに進め、国民学校の児童を動員した「一日一語運動」に関する論文、「国語常用」強制・朝鮮語使用禁止に関する論文、及び罰札等の賞罰表象を用いた「国語常用」運動をテーマとした計3本の学術論文を平成18年3月に発表したが、これらは上述「諮問答申書」の記載内容を綿密に分析検討した上での実証的な研究となっている。また、「釜山日報」(釜山広域市立市民図書館蔵)を調査して得られた1942年当時の「国語」政策関連記事を上記論文の中で紹介した。 今後、皇民化政策が導入された1937年まで遡及し、「国語講習会」等の社会教育を通じた朝鮮総督府の「国語常用運動」に関して、資料を掘り起こしつつ更に研究を発展させたく思う。
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