研究課題
基盤研究(C)
本研究は日本軍政下の「南方」占領地域における日本語教育・「日本化」教育の実態を解明していくことにより、日本の近代教育の理念・方法論など多文化・多様化状況における教育のあり方を再検討し、そこから今日の多文化・多様化状況における日本語教育にも有益な理念・方法論を掘り起こすことを目指したものである。本研究により新たに得られた知見は、以下の2点である。1 北ボルネオの日本語教育の多様化の特徴は、教育理念の扶植よりも方法論の扶植にある。「北ボルネオ」では、他の占領地域同様、学習者・教員の多様化は見られたが、教科書・教材類の多様化は認められない。その一方で、文字に頼らない教育が進められたと見られる。つまり、教科書の配給が十分でなかった反面、儀式的・身体儀礼的な訓練や歌による日本語の普及が進められた。「北ボルネオ」のうち、サラワクの日本語教育の多様化現象としての特徴は、日本語教育の方法論的な面に表れている。マラヤを含め「北ボルネオ」においては教育理念の扶植というより、むしろ、「心身を鍛錬する」、「体得する」という方法論の扶植にこそ「錬成」の機能が認められる。2 学習者・学習目的といった教育の多様化が進めば進むほど、その多様化の背景にある個々人の要因に目を向けることが必要となってくる。現地では、日本軍政の記憶が負の遺産として今も残っていることは事実である。その一方で、日本語教師が持っていた、現地の青少年を自立した人間として育成しようとした人間教育の意識は、一部ではあるが、現地の青少年の生き方に多大なインパクトを与えるという一面ももたらした。
すべて 2006 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
比較社会文化 第12巻
ページ: 67-78
Bulletin of the Graduate School of Social and Cultural Studies Vol.12
ポリグロシア 9号
ページ: 145-154
福岡工業大学研究論集 第37巻・第1号
ページ: 1-10
Polyglossia vol.9
Research Bulletin of Fukuoka Institute of Technology vol.37, no.1