(1)渡邉時夫が英語教育分野、阿久津昌三が文化人類学分野から、小・中・高校の国際理解教育に役立ちそうな多文化主義、多文化教育関係の図書・論文及びビデオなどを収集し、それらを分析すると共に、特に中・高校の英語教員対象のアンケート調査・聞き取り調査を通して英語教員が抱える主な問題点を決めだした。学校種に関係なく共通の主たる問題点と解決策(研究成果)は次の通りである:(a)教科書に英語国のみならず非英語国が沢山登場するようになり、個々の学校に配属されるALTだけでは、異文化理解教育が難しくなった。⇒(i)各県のALTの数は数百にも及ぶ。教員がteamを作り、教科書に登場する国々や文化圏出身のALTやCIRを対象に、主として教科書に関連した事実や価値観を引き出すためのアンケートを作り、回答をデータベース化することを提案。様々な国々について、生徒のステレオタイプ的な理解が避けられる。(ii)渡邉は、ALTの活用について具体的な論文にまとめ、Teaching English Now(三省堂)に連載した。(iii)阿久津は、field workを重視する文化人類学の研究手法を用い、地域の人材、海外協力隊員、新聞記者、教科書会社、大学教員などの活用や共同研究及び校内の英語教員と社会科(地歴)教員の協力体制の必要性を強調した。(b)教科書に述べられている事柄は断片的で、その国や文化が正しく伝わるか心配⇒(i)一般化を避ける(ii)直接体験や擬似体験の機会を増やすことを具体例と共に提案した。 (2)(1)の成果を踏まえ、国際理解教育に熱心な県内の2名の小学校教員による実践研究、(a)海外で働く青年海外協力隊員と小学校との情報交換に基づく教育、及び(b)地域の国際理解推進組織や特定個人を活用して、アフガニスタンの子どもたちとの交流を推進する教育の試み、について研究会、紙上(ネット上)討論などを通じて研究を深めた。二人とも、研究結果を小論文にまとめた。(3)以上の研究をまとめ、現在刊行の準備を進めている。
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