本年度は、まず、前年度にカナダのオタワでイマージョン教育関係者を対象として実施したアンケートおよびインタビュー調査から得られたの結果の分析をおこなった。この調査の対象者は(1)イマージョンを履修している児童・生徒の保護者、(2)イマージョンを履修した大学生(卒業生)、(3)イマージョンを実施している学校の管理職(校長)、およびイマージョン教育の研究者である。調査項目は、(ア)プログラム履修動機、(イ)獲得されたフランス語能力への満足度、(ウ)プログラムへの満足度、(エ)イマージョンの成功度、(オ)個別目標達成度、(カ)プログラムの成功要因等である。(ア)〜(ウ)は保護者と卒業生が対象で、それ以外は全員が対象である。(ア)履修動機に関しては、連邦政府の公用語政策との関連で近年ますますその社会的重要性を増しているフランス語の学習から得られる実利的価値が大きなウエイトを占めていることが判明した。(イ)フランス語能力への満足度と(ウ)プログラムへの満足度に関しては、保護者と卒業生のいずれも非常に高い満足度を示した。(エ)イマージョンの成功度に関しては、保護者の80.3%が、卒業生の92.9%が、そして学校長と研究者の100%がイマージョンがプログラム全体として成功したと回答した。(オ)個別目標達成度に関しては、いずれのグループもフランス語能力の育成と学力の保証(技能面)においては達成度を高く評価している反面、フランス語系カナダ人への共感の育成と英語系カナダとフランス語系カナダの間の共通理解の増進(情意面)においては達成度を低く捉えていることが判明した。(カ)プログラムの成功要因に関しては、成功要因(10項目)のランク付けがそれぞれの被験者グループとイマージョン・プログラムとの関わり合いの形態や密度を濃厚に反映しているということが判明した。本年度は、さらに教師へのアンケートを実施し、現在、その結果を集約しているところである。
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