研究概要 |
平成15年度は、まず、Chomsky(1995)に基づく理論的考察および第二言語習得研究における形態素習得の先行研究の調査と分類を中心に行った。その後、心理言語学データ収集のための実験機器の整備を行った。 Chomsky(1995)に基づく理論的考察においては、形態素における誤りの原因を説明するために、素性の習得・使用という観点から、極小理論を適用しinherent featureとoptional featureの違いという考え方を取り入れることを試みた。それによって、これまでのデータの一部が適切に説明されることが明らかになった。さらに、Distributed Morphologyと呼ばれる理論的枠組みによって、極小理論ではカバーできない形態素の脱落や過剰使用の説明ができる可能性があり、これについてはさらに研究が必要である。 先行研究の分類については母語習得研究を参考にした。母語習得研究では独立した言語能力を仮定するモジュラー一致モデルと仮定しない多要因モデルの2つがある(Crain and Thornton,1999)。形態素習得に関する先行研究を詳細に検討した結果、第二言語習得研究においても、明示されてはいないものの同様の分類が可能であること、および、後者は説明能力に問題があり、前者のほうがより説明力があることが明らかになった(Wakabayashi, in press)。平成16年度は、モジュラー一致モデルに基づいて、実験文を作成する。 実験機器の整備およびマテリアルデザインについては、実験心理学的手法を取り入れる準備を整えた。読解速度を測定することによって、言語処理の速度を測り、それによって、言語能力を見るという手法を取り入れて、データを収集する予定である。(736字)
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