研究課題
基盤研究(C)
第二言語習得研究では、1980年代から90年代にかけて、第二言語学習者が、使用可能なインプットに基づく模倣や一般的認知能力に基づく問題解決ストラテジーだけでは習得不可能な文法知識を身につけていることが明らかになった。一方、なぜある部分が習得困難かという問題は、1990年代後半になるまで、さほど関心が払われなかった。その後の研究で、言語理論に基づく原因解明が試みられたものの、基盤となったのは自然発話データであり、目的にあったものではなかった。本研究では、結語環境を統制した実験を行い、統語環境によって3単現の-sの誤りに増減があること、また、その結語環境とは、主語と動詞の線的距離という点だけでは説明がつかないことを実証した。研究は全体を5つに分けて行った。一つ目の研究(研究報告書第1章)では、第二言語習得研究における言語理論の重要性を指摘した。2つ目の研究(研究報告書第2章)では、実験データを3つ紹介した。そのうちの2つは口頭和文英訳タスクによる産出データを集め、1つは読解時間測定による文理解処理のデータである。3つ目の研究(研究報告書第3章)では、第1章の結果に基づき、あらたな実欧文を加え、口頭和文英訳タスクで産出データを収集した。4つ目の研究では(研究報告書第4章)では、第1章の結果に基づいて予測を立て、事象関連電位を測定した。5つ目の研究(研究報告書第5章)では、屈折のしくみについて、3単現の-sではなく、規則活用と不規則活用の両方がある過去屈折を題材に、第二言語学習者の屈折のしくみを見た。報告書の中で随時述べたように、目本人英語学習者の形態素の誤りの原因追求のためには、音韻、綺語、談話など様々な変数を統制して実験を行う必要がある。Be動詞や助動詞のhave/hasなど、本研究で扱わなかったものもあり、さらなる研究が必要である。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
明海大学大学院応用言語学研究科紀要 6号
ページ: 83-95
Selected Research Papers in Applied Linguistics (Graduate School of Applied Linguistics, Meikai University) No.6